『シリーズ大江戸 第2集』を見て、税のない世界を考える

NHKスペシャル『シリーズ大江戸 第2集が』が面白かったので、記事にします。

「江戸」という町

江戸時代の「江戸」という町は、人口が100万人で、当時でも世界有数の大都市だったということは有名だと思います。

ただ、当時の庶民のくらしは、決して豊かではなたったというのが、一般的なイメージではないでしょうか。

しかし「シリーズ大江戸 第2集」では、江戸の庶民は豊かな暮らしをしていたというのです。
最新の調査結果で、江戸の経済成長率は、世界で2番目だったそうです。

世界で2番目の経済成長というのはすごいです。
当時のヨーロッパ列強は世界中に植民地を作り、植民地からの富を本国に吸収していたはずです。
そんなヨーロッパの都市と比べても、鎖国している日本の江戸が経済成長しているというのですから。

この経済成長率が、日本全体だったらどうだったかというのも知りたいところです。
江戸の町は豊かだったということなのですが、日本全体はどうだったのか。
鎖国している日本が、産業革命を成し遂げて、植民地を持っているヨーロッパ列強と同じように経済成長をしているとは考えられません。
江戸時代は中期以降、日本の人口は増えていないという統計がありますし、日本全体でみれば、やっぱり貧しかったのかなと思います。
参勤交代で、全国の大名が江戸へやってくるので、その際、ヨーロッパ列強が植民地の富を本国に取り込んだように、江戸の町はは全国の富を取り込んでいたのかもしれません。

格差社会の江戸

江戸という町が世界有数の経済成長を遂げていたという話なのですが、経済成長が良いことばかりではないのは、今も昔も同じです。
経済成長の結果、貧富の差が広がり、格差社会となっていったようです。

ひとたび飢饉となると、貧しい人たちの生活は立ち行かなくなります。農村からも餓えた人たちが江戸に流れさらに格差が広がります。そしてお金持ちの商人の屋敷を襲うようになります。
打ちこわしです。
5日間で江戸の店1,000件が襲われ、米や財産が盗まれたこともあるそうです。

そんな格差問題に取り組んだのは、幕府ではなく町人でした。
町人たちでお金を出し合って「町会所(まちかいしょ)」というものを運営し始めます。
町会所は、地区ごとに商人たちが出したお金でお米などを買い、貧しい人に分け与えます。
いわば町人たちが運営するセーフティネットです。
町会所が運営する米蔵のひとつには、50万人が半年食べられる膨大な米が蓄えられていたようで、莫大な費用をかけて運営されていたようです。
格差解消のために町人たちが自ら多額の負担をしていたとのことです。

町会所は、そのほかに、古くなってきた運河の大規模な補修をおこなったり、インフラのメンテナンスも行っていたようです。

江戸時代の税金

ここで唐突ですが、江戸時代の税金を考えてみたいと思います。

江戸時代は、江戸に幕府がありましたが、藩が独立国家のようなものなので、藩ごとに税制は異なっていました。
ただ大きくはどこの藩も変わらず、江戸時代の税といえば、やはり「年貢」です。

年貢は、収穫した米の一定割合をお上に納めるというものです。
お金を納めるのではなく、お米を納めるので「物納」というやつです。

年貢は、農民に対して課される税です。
では、商人に対してはどんな税が課されていたのか。
商人に対しては、上納金のようなものは一部ありましたが、税は課されていませんでした。
現代では、商売で儲かると税金のことで悩むことになりますが、江戸時代の商人は儲けても税の心配はなかったのですね。

税がない世界

江戸時代の商人には、税はありませんでした。

「シリーズ大江戸 第2集」では、商人たちは町会所を作って、セーフティネットを作ったり、インフラの整備をしたりと、行政がやるようなことを、自分たちでお金を出して行っていたことが紹介されていました。

まるで自分たちで税を出し合って、社会課題の解決に取り組んでいたようだと思いませんか。

もし、江戸時代の商人に税が課されていたら、自分たちでお金を出し合って、社会課題の解決をしていたのだろうか。

もし、現代で税がなければ、自分たちでお金を出しあって、社会問題の解決に取り組むだろうか。

「シリーズ大江戸 第2集」を見て、そんなことを考えました。

商人に税が課されるようになるのは

ちなみに商人にはいつから税が課せられるようになったのか。

時代が明治になっても、しばらくは税の対象が農民なのは変わりませんでした。
明治6年に地租改正という税の改正が行われますが、地租改正では、

・物納から金納に変わった
・収穫量に応じてではなく、(収穫量に応じて決められた)地価に応じて、税を納めるように変わった
(収穫量が多くても少なくても、一定の税を納めることになった)

という変化はありますが、あくまで税の対象は農民です。

明治20年に所得税が創設されて、ここで商工業者に対して税が課せられるようになります。
ただ、この時の所得税は税率が1%~3%の累進税率で、負担は重くはありませんでした。

明治27年に日清戦争が始まります。明治37年には日露戦争と、富国強兵の時代です。
たび重なる戦争により財政規模が膨らみ、増税がされていきます。
明治29年に営業税(現在でいう事業税のようなもの)が課せられるようになり、ここで商工業者の税負担が重くなっていくことになります。

今では当たり前に課されている税金も、歴史を振り返ってみると、変遷が分かりおもしろいです。

 

【今日の1曲】

Stop Where You Are / Corinne Bailey Rae

コリーヌ・ベイリー・レイが来日していたのですね。昨年の来日公演は見に行ったのですが、まさか2年連続で来るとは思っておらず、見逃してしまい残念です。